熱処理の基礎と種類
熱処理について
鋼は、含まれる炭素(C)の量や熱処理の方法によって、硬さ・強さ・粘りなどの性質が大きく変化します。
ここでは、一般熱処理を中心に、代表的な熱処理の種類とその特徴をご紹介します。
一般熱処理
鋼には炭素(C)が約0.03~2.1%含まれています。そして、そのC%の多い・少ないによって硬さや強さが違ってきます。 さらに熱処理を施すことによって、硬さを約2~3倍にすることもできます。
熱処理は、鋼を変態点(性質が大きく変わる温度)まで熱して、その後、必要な温度範囲だけを必要な速さで冷やすことによって行います。 特に冷やし方によって、硬くもなれば軟らかくもなります。
熱処理には、焼なまし・焼ならし・焼入れ・焼戻しなどからなる 一般熱処理と、 表面硬化・表面強化・表面滑化からなる 表面熱処理の2種類があります。
焼なまし
鋼を軟らかくする熱処理
鋼を加熱した後、できるだけゆっくり冷やします。
(炉冷)
焼ならし
鋼をもって生まれた姿にする熱処理
鋼を加熱した後、焼なましよりやや速く冷やします。
(空冷)
焼ならしをすると、鋼は硬すぎず軟らかすぎず、適度な硬さと粘り強さを持つようになります。 さらに摩耗にも強くなり、被切削性も向上するため、近年よく利用されています。
焼入れ
鋼を硬くする熱処理
熱処理の中で最もよく利用されている方法です。加熱後、速く冷やすことで硬さを与えます。
- 水冷:37℃以下
- 油冷:60~80℃
焼入れを行うと鋼は硬くなりますが、その反面、脆くなるため、通常は焼戻しと組み合わせて行います。
(焼入れ・焼戻し)
焼戻し
硬さを調整し、粘りを与える熱処理
焼入れした鋼は、硬い反面、脆いという欠点があります。 そこで、硬さを少し犠牲にして粘りを与えるために、再加熱して冷やす処理を焼戻しといいます。
焼戻しには、再加熱温度の違いによって
高温焼戻しと
低温焼戻しの2種類があります。
一般に「調質」と呼ばれるものは、高温焼戻しによって行います。
高周波焼入れ
表面だけを加熱して硬化させる方法
表面だけを電気誘導加熱し、焼入れ硬化する方法です。 加熱に高周波を使用する点が特徴で、基本的な考え方は一般熱処理の焼入れと同じです。
焼入れ後は、低温焼戻しを行います。
(高周波焼入れ・焼戻し)
浸炭焼入れ
表面に炭素を浸み込ませて硬化させる方法
炭素(C)%が少ない鋼の表面に炭素を浸み込ませ、その後焼入れを行って表面を硬化させる方法です。
浸炭には、個体浸炭・ガス浸炭・液体浸炭の3種類がありますが、現在では ガス浸炭が主流です。
焼入れ後は低温焼戻しを行います。
(浸炭焼入れ・焼戻し)
窒化
表面に窒素を浸み込ませる方法
鋼の表面に窒素(N)を浸み込ませる方法です。 鋼に窒素が入ることで、それだけで硬くなるため、焼入れをする必要がありません。
アンモニアガスを使う 硬窒化と、 混合アンモニアガスなどを使う 軟窒化があります。
火炎焼入れ
加熱源だけが異なる表面硬化法
一般熱処理の焼入れと、基本的な考え方や処理内容は同じですが、 加熱源に火炎を用いる点が異なります。